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ポスティング不可の壁を乗り越え、富裕層に「価値」を届ける新しい広告の形

SAMURAI CEO2026

株式会社affluent
代表取締役

髙山 勇樹

1979年、神奈川県生まれ。新卒で株式会社ぱど(現:株式会社Def consulting)に入社し、ナショナルクライアントの開拓や事業部長を歴任。在職中に富裕層向けメディア『AFFLUENT(アフルエント)』の創刊に携わり、2020年6月、コロナ禍の緊急事態宣言下で同事業をスピンアウトし、株式会社affluentを設立。現在は、100万件の富裕層データベースと約1万2000人のメルマガ会員を武器に、高単価商材を扱う企業向けのマーケティング支援を展開。広告を「売る」手段から「価値を伝える」手段へと進化させるべく、日々奔走している。

建築基準法の変更がきっかけで生まれた、富裕層向けメディアという発想

株式会社affluentは、富裕層向けオフラインメディア『AFFLUENT(アフルエント)』や、経営者やお医者様にアプローチできる「AFFLUENT DM」というダイレクトメールサービスをメインに展開しています。私は新卒でフリーペーパー大手の株式会社ぱどに入社し、事業部長として広告代理店業務などを担当してきました。その在職中に『AFFLUENT』の創刊に携わり、その後、事業をスピンアウトして株式会社affluentを設立しています。

このメディアが生まれた背景には、都心で起きた大きな変化がありました。2008年から2011年ごろ、建築基準法の変更によって都心にタワーマンションや低層のコンシェルジュ付きマンションが急増したのです。もともと全国で1000万部発行しているフリーペーパーの会社にとって、ポスティングは生命線でした。ところが、都心の良い場所にある高級マンションが軒並みポスティング不可になってしまったのです。

そこでこの課題を解決するため、高級マンションにお住まいの方々の宛名を取得し、直接お届けするメディアをつくろうと考えました。 しかし、既存のフリーペーパーは地域密着型で、町の飲食店のクーポン券を掲載するような内容が中心でしたから、高級マンションの居住者には適していません。そこで、ターゲット層に合わせて広告予算も引き上げ、中身も富裕層向けに変えた『AFFLUENT』を創刊しました。

当時、富裕層向けのメディアは少なく、広告としての反響は非常に良好でした。既存のメディアは年々数字が下がっていく中で『AFFLUENT』だけはどんどん成長していったのです。この手応えが、事業を本格的に拡大していくための大きな原動力になりました。

興味のない人には届けない。ピンポイントだからこそ実現できる成果

弊社の最大の強みは、100万件の富裕層データベースを保有していることです。これを活用することで、ポスティングNGの高級マンションに住んでいる方に対しても、『AFFLUENT』やダイレクトメールを確実にお届けできます。それに加えて、メルマガ会員も約1万2000人おり、その約70%が年収1000万円以上の方で、金融資産5000万円以上を保有している方も約25%いらっしゃるという、まさに富裕層に特化した会員基盤を築いてきたことも大きな財産となっています。

弊社のサービスをご利用いただいているクライアントは、富裕層や高所得層にアプローチしたい企業様が中心です。不動産や旅行、外車ディーラーといった業種が多いですが、「AFFLUENT DM」はターゲットとしている層に直接アプローチできることから、会員制別荘や高級不動産、金融サービスなどのBtoC・BtoB企業様にも多くご活用いただいています。

実際にいただいた反響をご紹介すると、別荘会員権を販売している企業様ではダイレクトメール経由で4000万円クラスの会員権を成約したケースがありました。また、外車ディーラー様の例ですと、ダイレクトメールをお届けした高級マンションにお住まいの方々からの注文が殺到し、2か月で高級外車が30台以上売れたという実績もあります。

なぜこうした成果が生まれるのか。それは弊社のサービスの本質が「買いたいと思っている人に届ける」ことにあるからです。大規模な広告をしても、興味のない人に届けていては意味がありません。高単価商材や高付加価値商材をすぐに購入できる人、あるいは真剣に検討している人にターゲットを絞ることで、効果的なマーケティングを実現しています。

自分ひとりで動くことには限界がある。困難な時期に気づいた任せることの重要性

今までで一番大変だったのは、コロナ禍での資金繰りでした。広告業界の特性上、お客様から予算の申し込みをいただくのですが、緊急事態宣言が発令されると今月の予算を来月以降にずらしてほしいという依頼が相次いだのです。年間で見ると予算は変わらないのですが、売上のタイミングがずれるため、どんどん現預金が減っていく恐怖がありました。

それでも、メディアをつくって送るという業務は変わらず進めなければなりません。給料や会社の家賃も払わなければならない中で、見込んでいた売上が入ってこないというのは、非常に厳しい状況でした。

そうした状況を乗り越えるため、取捨選択を徹底することにしました。やることとやらないことを明確に決めて、コロナ禍でも好調な業界にアプローチしたり、コロナ禍が明けた後にV字回復する業界を見越して事前に動いたりといった戦略を立てたのです。

この時期に私が学んだのは、困難なときこそチーム全体で力を合わせることの大切さでした。それまでの私は「自分が動くしかない」という考え方だったのです。しかし、私1人が2倍動いても、結果が2倍になるとは限りません。むしろ社員に任せた方が、売上もチームワークも良くなるということに気づきました。チームで戦略を練り、それぞれが自発的に行動したことで、あの厳しい時期を乗り越えられたのだと思っています。

最大の資産である会員基盤を活かし、新たなマネタイズへ

既存事業のさらなるブラッシュアップは当然として、今後は新たな挑戦もしていきたいと考えています。それが、富裕層に対するBtoCでのマネタイズです。これまでは広告主である企業様からのBtoB収益が中心でしたが、せっかく1万2000人もの富裕層会員との接点があるので、この強みを直接的に活かしていこうという戦略です。

その一環として、某シャンパンブランドとタッグを組み富裕層を集めるイベントを企画しています。そうした場を通じて絵画を販売したり、オーダーメイドの旅行プランを提案したりできるようになれば、さらなる価値提供ができることでしょう。弊社最大の資産をより多角的に活用していきたいと考えています。

失敗を恐れず一歩踏み出す勇気を。謙虚で素直な姿勢が成長を加速させる

私は謙虚さと素直さを持った方と一緒に働きたいと思っています。私が2003年に社会人となってから今まで見てきた中で、成果を上げていたのは謙虚で素直な人でした。まわりからのアドバイスを素直に受け入れて、まずやってみる。そして、それに慣れてきたら自分の色を出していく。この姿勢が大切だと思っています。

また、若いうちはハードワークこそが最大の武器になります。30代以降はテクニックや人脈といった武器が増えますが、若い頃はとにかく数をこなして経験を積むしかありません。しかし、そのハードワークの経験があるからこそ、テクニックが磨かれ、人脈が築かれるのです。正解が見えない時代だからこそ、失敗を恐れず一歩を踏み出す勇気を持てる人と、一緒に新しい価値を生み出していけたらうれしく思います。