社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所
代表社員

1972年、東京都生まれ。20代前半で社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所に入所。中小企業の経営者との交流を通じて仕事の魅力に目覚め、30歳で社会保険労務士資格を取得するなど、約30年にわたり人事労務の現場に携わる。2016年に代表社員に就任。「働きやすい会社から働きやすい社会へ」という理念を掲げ、社労士の枠にとらわれないサービスを展開してきた。経営者のシェルパとしてクライアントのビジョン実現に向けて全力で支援を続けている。現在は社員100名以上の体制で、スタートアップから大企業まで幅広い顧客のビジョン実現を支援している。
大槻経営労務管理事務所では、人事労務コンサルティングサービスと労働社会保険のアウトソーシングサービスを提供しています。具体的には、職場環境に関する顧問として毎月お客様にアドバイスを行うとともに、年金や労働保険といった手続きの代行も担当しています。
私は事務所を継ぐ予定はありませんでした。もともと兄がすでに事務所におり、そのまま後継者となると思っていました。しかし、いろいろな経緯があり、兄が事務所を離れることになり、私は20代前半でこの世界に飛び込むことになったのです。
入所して1年くらいは、事務作業ばかりやっていたので社労士という仕事にまったく魅力を感じていませんでした。入所後1年を経過すると、だんだんと担当を持つようになり、中小企業の経営者と接する機会が多くなりました。そこにはさまざまな“気づき”があり、次第に仕事の奥深さを感じ、「社労士って面白い」と思えるようになっていったのです。その後、30代半ばごろから、2代目の経営者や同世代の経営者たちと交流する機会が増え、「自分も経営をしてみたい」という思いが強くなっていきました。
2013年に人事交流を軸にした会社を起業。その後、2016年に正式に代表社員に就任し、経営者として約10年間にわたって事務所を率いてきました。気づけば社労士業界でのキャリアは30年ほどになりますね。
大槻事務所の理念は『働きやすい会社から働きやすい社会へ』です。私たちが目指す『働きやすい会社』とは決して「残業が少ない」や「休みが多い」「給与が高い」といった楽な会社ではありません。私たちが目指すのは、社員一人ひとりが成長したいと思える会社、社員が実際に成長できる会社。成長した社員が活躍できる会社。そして、社員の成長が会社の成長にちゃんとつながる会社であり、その先に経営者と社員、そしてその家族までが幸せになれる会社です。こうした働きやすい会社を増やすことで、社会全体を働きやすい社会にしていきます。なぜ、私たちは働きやすい社会を作るのか?それは、多くの企業が掲げるビジョンの実現を支援することで強い日本、未来に誇れる日本を残したいからです。
この理念を実現するため、私たちは社労士という従来の枠にとらわれず、人事から労務まで幅広くカバーし、AIなどの新技術も活用しながら、ときには他の専門家とも協力してあらゆる課題を解決しています。
こうした体制を支えているのが、豊富な事例の蓄積と充実したコンサルティング人材です。規模の小さい事務所では丁寧な対応が可能ですが、対応力に限界があり、大規模な事務所では業務処理が中心でコンサルティング人材が手薄になりがちです。その点、大槻事務所は両者の強みを併せ持ち、きめ細かさと対応力の両立を実現しています。
おかげさまで、スタートアップから東証プライム企業まで幅広くお取引させていただき、東証プライム企業だけでも40社ほどご支援しています。就任当初は社員数40名、拠点も銀座のみでしたが、今では社員は100名を超え、銀座に3フロア、横浜、福岡、君津に拠点を置くまで拡大してまいりました。ご紹介や、以前担当した人事の方が転職先でもお声がけくださるなど、信頼の輪の広がりとともに事務所も成長してきました。
30代のころ、私の価値観を大きく変える転機がありました。ある大手企業の50代の女性人事部長から、100人規模のリストラ説明会に立ち会ってほしいという依頼を受けたときのことです。説明会は大荒れでした。「裏切者」「会社の犬」といった罵声が説明をしている人事部長に浴びせられました。そんな環境でも部長は淡々と冷静に役割を果たしていました。その甲斐あってかリストラは無事に終了しました。私は当時「お手伝いできて良かった」と安堵したのを思い出します。しかし、後日、思いもよらない事実を知りました。その人事部長自身も、リストラの対象者として応募していたのです。思えばなぜ、あんなに大炎上したのか?それは対象者が部長の同期だったからです。部長も言いたいことはたくさんあったはず。それでも自身の役割を全うし、そして自分自身も希望退職に申し出たのです。その現実を目の当たりにしたことで、私はこんなことのために頑張ってきたのかと落ち込み、不幸な人が生まれてしまう現状に気づかされました。『こうなる前に俺にはもっとやれることがあったんじゃないか』
この出来事を通じて、私は社労士としての役割に限界を感じ、それを見つめ直す機会を得ました。確かにトラブル対応も重要だ。だけどそれが深刻化してから対応するのではなく、もっと早い段階で企業の成長を支援し、社員が幸せに働ける環境をつくることが社労士の真の役割だと考えるようになったのです。
そして2016年に代表社員に就任した際、この経験をもとに「働きやすい会社から働きやすい社会へ」という理念を打ち出しました。この理念が事業を変革し、2年間で売上を倍にする成長を実現しました。とはいえ、その先は組織の力が不可欠です。現在は組織力を強化しながら、さらなる成長に向けて挑戦を続けています。
これからは、地方の中小企業支援により一層力を入れていきたいと考えています。全国を見渡すと、成長意欲の高い中小企業がまだまだたくさんあります。そうした「もっと伸びたい」という熱い思いを持つ企業、特に地方で頑張っている企業をもっと応援したいのです。
その第一歩として、2024年に福岡で拠点を開設しました。成長を目指す中小企業から多くのご依頼をいただいており、手応えを感じています。この成功を足がかりに、今後も全国各地に支社を展開していくつもりです。
同時に、時代の変化にも積極的に対応していきたいと思っています。社労士業界は平均年齢が55歳と言われており、経験豊富な60代・70代の先輩方が長年業界を支えてこられました。しかし、これからは新しい技術を積極的に取り入れ、業界全体が進化していく必要があると考えています。
AIをはじめとする新しい技術は、社労士という仕事のあり方を大きく変える可能性を秘めているものですから、うまく活用することでより効率的に、より質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。それは結果として、地方の中小企業により多くの支援を届けることにつながっていくはずです。
日本全体の中小企業を元気にするために、これからも全力で取り組んでいきます。
学生の皆さんには、若いうちから自分への投資を始めてほしいと思います。早い時期に始めるほど複利が効きますから、今のうちにいろいろなことに挑戦して、10年後に「これが自分の武器です」と言えるものを手に入れてください。
その上で大切なのは、働く理由を自分でつくることです。誰かに与えてもらうのではなく、自分でしっかりと考えてみましょう。パートナーのため、趣味のため、そんな身近な目標でよいのです。その目標に真摯に向き合ううちに、仲間のため、お客様のため、そして社会のためへと、理由は自然と広がっていくでしょう。
私は皆さんの中でも、特に誠実な人と一緒に働きたいと考えています。加えて、主体的でありながら人を頼れる柔軟性と、お客様のビジョンの実現という目的を見失わない軸を持った人も求めています。AIなど新しいツールも活用しながら、自分の頭でしっかり考え、自分が知らない情報にもアンテナを張れる。そういう方とともに、働きやすい社会を実現していきたいですね。