株式会社FCE
取締役 上級執行役員

2002年、同志社大学商学部を卒業後、経営コンサルティング会社に入社。教育事業の立ち上げに参画し、トップセールスとして活躍する。その後、中日本・東日本のマネージャーなどを歴任し、2018年に株式会社FCEエデュケーション代表取締役社長に就任。現在は株式会社FCEの取締役として、教育事業に加え、新たに立ち上げた「AIソリューション事業」を統括している。
株式会社FCEは、「働くAI社員」の導入を謳うAIソリューション事業の他、企業のDXをサポートするRPA(Robotic Process Automation)を中心としたDX推進事業や、教育研修事業、出版事業などを手がけています。
私がもともと入社したのは、株式会社ベンチャー・リンク(以下VL)というフランチャイズビジネスを中心に展開する会社でした。VLの子会社として誕生したのが、株式会社FCEエデュケーション。現在の株式会社FCEの前身で、私は立ち上げから関わっていました。その後、2019年に株式会社FCEの取締役に就任し、今に至ります。
私たちが近年特に力を入れているのが、「AIソリューション事業」です。具体的には、さまざまな業務をサポートするAIプラットフォーム『AI OMNI AGENT(エーアイ オムニ エージェント)』を展開しています。
この事業を立ち上げた背景には、日本の中小企業が抱える「人手不足」と「生産性」の課題があります。営業職の現場であれば、本来、営業担当者が時間を割くべきなのは顧客との「商談」です。しかし実際には、商談前の企業リサーチや提案資料の作成、商談後のシステム入力といった「付帯業務」に、多くの時間が費やされています。働き方改革で労働時間の短縮が求められる中、このような作業に追われ、本来の価値を発揮できていないケースが少なくありません。
そこで考えたのが、「働くAI社員」です。AIを活用して、さまざまな付帯業務にかかる時間を削減できれば、その分、より重要な業務に注力しやすくなります。営業担当者であれば、空いた時間を商談に充てることでアプローチ数が増え、受注率や売上の向上につながるでしょう。
単なる効率化だけでなく、人が「クリエイティブな仕事」に集中できる環境をつくること。それが、私たちがAI事業を通じて実現したい「生産性の最大化」です。
弊社の強みは、「使いやすさ」と「技術力」。それを現場に最適化する「コンサルティング力」も大きな特徴です。
これまでさまざまな企業との連携を通じて事業を発展させてきましたが、『AI OMNI AGENT』の開発にあたっても、AIエージェント領域で実績を持つパートナー企業と資本業務提携を結びました。彼らの技術力と私たちの知見を融合させたことが、「誰でもすぐにAIを活用できる」サービスの実現につながっています。
『AI OMNI AGENT』は「言葉(自然言語)」で指示を出すだけで、誰でも直感的に独自のAIエージェントをつくれます。たとえば、「〇〇社の情報を調べておいて」と、チャットのように書き込むだけで、AIが公開情報をリサーチ。自社のテンプレートに合わせて、提案書の骨子まで作成してくれます。「ChatGPTを触ったことがある」というレベルの方であれば、スムーズに業務へと組み込めるでしょう。
実際、AIに関して素人だった私たちのチームメンバー6人でトライアルを行ったところ、1ヶ月で400個ものAIエージェントをつくれました。自分たちの業務フローに合わせて、「ここを自動化したい」と思ったときに、現場の人間が自らの手で、独自のAIエージェントを生み出せる。これこそが、『AI OMNI AGENT』の真骨頂です。
今後もパートナー企業の力を借り、現場の声や成功事例を分析しながら、より「使えるAI」へと進化させ続けていきたいと考えています。
私のキャリアにおける最大の転機は、株式会社ベンチャー・リンクが民事再生となった時期です。
当時、私は教育部門のトップセールスとして実績を上げ、組織を牽引する立場にありました。しかし、親会社の経営状況が悪化するにつれて、優秀な仲間たちは次々と去っていきました。周囲からは「泥船からは早く脱出した方がいい」と言われましたね。ありがたいことに、他社から好条件のオファーをいただくこともありました。
正直、再生できる確証などどこにもありません。それでも私が残る決断をしたのは、当時の経営陣に対する「恩義」でした。彼らは自分たちの進退が決まっている状況でも、「社員のために」と必死に奔走し、教育事業を別会社として存続させる道筋をつくってくれたのです。その想いに応えたい、という一心でした。
しかし、いざ「残る」と決めた瞬間、私の中でスイッチが切り替わりました。「恩義」という感情の代わりに、「この会社を自力で再生させ、再び成長軌道に乗せる」という、強烈な覚悟だけが残りました。
当然、資金も人も足りませんが、助けを待っていても誰も助けてくれない。「ないなら自分で稼ぐしかない」「人がいないなら育てるしかない」。すべての結果を自分の責任として捉え、前に進むしかありませんでした。
この修羅場を乗り越えた経験によって、私は経営者にとって重要な「当事者意識」を身につけられたと考えています。一度きりの人生、安全圏に留まるよりも、困難な道を選び、それを正解にするまでやり抜く。その経験こそが、人を強くすると確信しています。
私たちは今後、「AIソリューション事業」をさらなる成長の柱へと育てていきたいと考えています。
弊社には、多くの企業や教育機関に導入いただいている生成AIプラットフォーム『FCEプロンプトゲート』シリーズや、RPA事業で培った顧客ネットワークがあります。「教育」と「DX」の事業で積み上げてきた経験を活かして、『AI OMNI AGENT』を広く普及させていくことが直近の戦略です。
私たちが掲げるミッションは、「『主体性』×『生産性』で人的資本の最大化に貢献する」です。「生産性の向上」は、労働力不足を解決する鍵の一つだと考えています。テクノロジーの力で人の可能性を広げ、一人ひとりがやるべき仕事に集中できる社会をつくる。単なるツールの提供にとどまらず、日本社会が抱える課題そのものを解決することこそが、私たちの次なる挑戦です。
これからの弊社を担う人材、そして未来をつくる若い世代に求めたいのは、「野心」と「素直さ」です。
「20代で大きな活躍をしたい」「社会をこう変えたい」という野心は大歓迎です。しかし、人の成長過程では、「不健全なプライド」が邪魔をすることがあります。等身大の自分を受け入れられないまま、ただ自分を大きく見せようとすると、失敗や指摘を素直に受け止められません。中には、「上司が悪い」「環境が悪い」と、他責思考に陥る人もいます。これでは、自分自身の成長を妨げてしまうだけでなく、私たちの掲げる「主体性」も発揮できないでしょう。
だからこそ私は、社員がそのような「逃げ」の姿勢を見せたときには、一切遠慮しません。「そのプライドが君の成長を止めているよ」と、ストレートに伝えます。ときには厳しい言葉になることもありますが、それは彼らが入社時に掲げた「なりたい自分」を、本気で実現してほしいと願っているからです。
「なりたい自分」を諦めて、今の小さな自分を守るのか。それとも、プライドを捨てて変化し、夢をつかみとるのか。私たちは、後者を選ぶ人を全力で応援します。AIという強力な武器を手に、私たちと一緒に「生産性の最大化」という社会課題に挑んでいきましょう。