UUUM株式会社
代表取締役社長 執行役員
1978年、千葉県生まれ。2001年、通信関連会社に入社。在籍中に上場を経験後、2007年に東証一部上場企業へ転職し、移動体通信事業において直営店200店舗以上の責任者等を歴任。2007年、同社統括部長、グループ会社取締役に就任。事業開拓、アライアンス、商材開発などの経験を経て、2014年、未知なる分野への挑戦と動画ビジネスの魅力に惹かれ、UUUM株式会社へ入社。2022年に代表取締役に就任。
私がUUUM株式会社に入社したのは2014年。当時のYouTubeはまだ「インフルエンサー」という言葉すら存在しないような黎明期でした。この世界に関心を持ったきっかけは、わが子の存在です。当時まだ小学生かそこらの子どもは、毎日YouTubeに夢中になっていました。そんな姿を目にするうちに、これからの新しいメディアとしてのYouTubeに可能性を感じたのです。私自身は、スポーツのハイライトや音楽を楽しむ際に見る程度でしたが、子どもたちの視聴スタイルを通して、従来のメディアの常識が大きく変わろうとしていることを実感しました。個人が自由に情報を発信し、それを誰もが自分の興味に応じて視聴できる。そんな新しいメディアの存在に、心躍ったのを覚えています。
入社時、UUUMは社員10人にも満たない小さな組織で、事務所はごく普通のアパートの一室でした。最初は物販のプロモーションからスタートし、テレビショッピングのようなモデルを目指したのですが、YouTubeを活用したプロモーションは企業からの認知が極めて低く、営業活動は思うように進みませんでした。
そんな中で感じたのは、「独自にメディアを作り出すよりも、すでにチャンネルを持っている動画クリエイターたちをサポートする方が事業としての将来性があるのでは」ということでした。当時はブロガーの勢いが強かったのですが、その延長線上で少しずつ動画クリエイターを起用する企業が現れ始めていました。まだ世の中にはないビジネスモデルだからこそ、ここに大きなチャンスがあると確信し、クリエイターのマネジメント事業へと軸足を移していったのです。
私たちは、インフルエンサービジネスという新しい市場を文字通り一から作り上げてきました。しかし、これはまだ道半ばだと考えています。市場は日々変化し、新しい可能性が生まれ続けています。特に最近では、コロナ禍を経てショート動画の台頭や新しいプラットフォームの出現、eスポーツの盛り上がりなど、市場は急速に進化しています。
私たちの最大の強みは、トップクリエイターからマイクロインフルエンサーまで、幅広い層のクリエイターが所属していることです。また、YouTubeにとどまらず、TikTokやInstagramなど、さまざまなプラットフォームで展開できる総合力も持ち合わせています。さらには、オフラインイベントの企画運営まで手がけるなど、クリエイターの活動をオンラインとオフラインの双方で支援できる体制も私たちならではの強みであると考えています。
こうした多面的な展開を支えているのが、柔軟な発想と幅広い視野です。たとえば、TikTokは10代、20代前半のユーザーが中心とされていますが、私たちは年齢層にとらわれることなく、それぞれのプラットフォームの特性を最大限に活かすことを重視しています。実際、収益を生み出すクリエイターは世代を超えて活躍しており、若手だけでなく幅広い年齢層で成功事例が生まれています。この多様性こそが、新しいムーブメントを生み出す原動力になっているのではないでしょうか。
そして、私たちの活動領域は一部の業界に限られません。ゲームや音楽はもちろん、スポーツや美容まで、ジャンルや言語を越えて、さまざまな分野のクリエイターが活躍しています。2023年9月には、UUUMがフリークアウトホールディングスの一員となったことで、テクノロジーとの融合による新たな可能性も広がりました。海外展開や技術連携など、さらなるシナジー効果が生みだされることで、クリエイターの活躍の場は今後も大きく広がっていくものと考えています。
クリエイターの影響力は、社会の中で確実に高まりつつあります。その好例がコロナ禍での活躍でした。若い世代へのリーチが難しい政府や自治体の情報発信を、クリエイターたちが効果的に届けたのです。一方で、SNSの普及はこうした新しいコミュニケーションの可能性を広げつつも、新たな課題を浮き彫りにしてきました。クリエイターへの誹謗中傷や個人事業主の働き方を巡る問題など、私たちが向き合うべき社会課題は山積みです。特に、心ない言葉による精神的な負担は深刻さを増すばかりであり、これは早急に解決すべき課題だと認識しています。
個人事業主を取り巻く環境は、制度面でも働き方の面でも大きく変化しています。私たちは、インボイス制度やフリーランス新法など、日々変化する環境についていかなくてはなりません。こういった環境の変化はクリエイターに限ったことではなく、編集者やイラストレーター、その他多くの個人事業主も対象です。ある意味では、クリエイターエコノミー全体の構造改革が必要な時期に来ているのかもしれません。
現在、私はUUUM株式会社の代表取締役と兼任して、クリエイターエコノミー協会の代表理事も務めているのですが、この代表理事として目指すのは、「すべての個人が安心して才能を発揮できる社会づくり」です。これは単なる理想論ではありません。クリエイターエコノミーの健全な発展には、クリエイターを取り巻くすべての人々が、安定して活動できる環境が不可欠だからです。
私たちの活動は、法整備への働きかけや有識者への提言など、社会システムの改善にまで及びます。彼らが生き生きと活動できる環境を整えること。それこそが、私たちに課せられた使命だと考えています。
弊社はインフルエンサーマーケティングを軸に、広告・クリエイターマネジメント・ゲーム開発など、さまざまな事業を手がけてきました。また、P2C Studio株式会社をはじめとするグループ企業と共に、クリエイターに関わる事業を総合的に推進し、社員一人ひとりが部署を横断しながら自身の領域を広げ、成長できる環境を作り上げてきました。
このような多岐にわたる事業展開において欠かせないのが、社員一人ひとりの創造性です。そのため、福利厚生面でも「エンタメ手当」など、ユニークな制度を導入しています。世間にエンターテインメントを提供する企業として、社員自身が日常的にエンターテインメントに触れ、その経験を業務に活かしてほしい。そんな想いを形にした取り組みです。
創造性を重視する私たちの企業文化は、日々の業務にも表れています。日常的なルーティンワークに留まらず、常に新しい企画や挑戦が求められるので、自ら考えてアクションを起こせなければなりません。そんな文化の会社ですから、絶対に実現したい夢や譲れない目標を持つ方々なら、きっと充実した日々を送れると思います。また、弊社社員には異業種からの転職者も多く、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が活躍しています。一人ひとりが多様な経験や視点を持っていることが、新しい価値を生み出す源なのです。
これまで、市場そのものを創造し続けてきた私たちですが、まだまだ発展の余地は無限大です。インフルエンサーエコノミーは今なお拡大と変化を続け、新たなプラットフォームの登場やショート動画の台頭など、新しい可能性が日々生まれています。この変化を楽しみながらも、共に未来を創造していける仲間と出会えたら嬉しいですね。