株式会社Ubicomホールディングス 代表取締役社長
青木 正之
1958年生まれ。1985年に株式会社ワールドの子会社である、株式会社ルモンデグルメに入社、最年少で取締役となり、1995年に親会社であるワールドに転籍。同時に阪神淡路大震災により打撃を受けた事業を立て直すため、情報通信産業に進出し子会社を立ち上げる。2007年に株式会社AWS(現・Ubicomホールディングス)として独立、2016年にはマザーズ市場に上場。2017年に「Ubicomホールディングス」に社名変更し、東証一部へ市場変更。また、東京ニュービジネス協議会の副会長として、「アントレプレナー創出委員会」を立ち上げ、次世代を担うベンチャー企業の経営者支援を通して、若い起業家の育成にも力を入れている。
時代を先読み、新規事業立ち上げ
私たちUbicomホールディングスは、英語と日本語が堪能なフィリピンエンジニアを約1000名擁し、組込みソフトウェアやアプリケーションなど、革新的なITソリューションをグローバルに開発・提供しています。また、メディカル事業では、医療機関向けのレセプト点検、データ分析などの医療ITソリューションを提供し、医療機関の収益改善、安全と質の向上を目指しています。現在、当社の医療情報システムは、約2万医療機関に提供されており、国内最大規模のユーザー数を誇っています。
Ubicomホールディングスの歴史は、1995年の阪神淡路大震災まで遡ります。当時私は株式会社ワールドという企業で、飲食事業部の役員をしておりました。震災の影響で飲食事業が壊滅的になったときに社長室に呼ばれ、新規事業をやってみないかと言われたのです。新しい事業、おもしろいなと思いました。やるなら、新しく勢いのある事業がいい。当時IT企業のオーナー社長の方々と親交があったことから、情報通信産業を始めようと、新規事業子会社を立ち上げました。
当時はシリコンバレーがどんどん拡張していった時代。今後ソフトウェアの需要が高まっていくに違いないと予測し、ソフトウェア事業に大きく舵を切りました。ソフトウェア事業の肝は、いかに優秀なエンジニアを集めるかということ。しかし、日本は少子高齢化で今後エンジニアが不足することは明らかです。
どこから優秀なエンジニアを募るかと考えたとき、ソフトウェアは基本的に英語でパッケージされていることに気が付きました。ならば、今後は英語ができるエンジニアが有利ではないかと。そこで、東南アジアで英語が公用語になっている、フィリピンのエンジニアを活用しようと思い立ちました。
現在では自動車産業、ゲーム産業、各大手メーカーを始め、多くの企業様からお声かけいただき、1000人程度いるエンジニアでは足りないほどで、新たに教育し、増員を進めている次第です。
また、メディカル事業も順調で、上場した2016年には利益率13.5%だったところ、リカーリングモデルにより翌年は30%以上、現在は約60%の利益率を出す事業に成長しています。
飲食業経営で学んだ「シンプル経営」
私はもともと、「サラリーマン」があまり似合わない男でした。ワールドという大きな会社の中にいても、ベンチャースピリットがあり、いつか起業したいと思っていました。ですから、2007年にグループから独立したのも必然と言えるかもしれません。
飲食業から全く畑違いの情報通信産業に進出したときに不安はなかったのかと、よく聞かれます。しかし、私自身全く不安を感じませんでした。
飲食業を運営していると、仕入れと売り上げを管理する経理、シフトをコントロールし、社員をマネジメントする人事、店に客を呼び込むための営業、顧客満足度を上げるための企画など、ビジネスに必要なすべての要素が揃うのです。飲食業である程度結果を出していたことが、私の自信となりました。
事業を運営するうえで大切なのは、シンプル経営であること。たとえグローバルな事業でも同じです。また、何か問題が発生したらすぐに修正すること、そしてデータを過信せず、派手なことはしないこと。何年経っても、会社がどれほど大きく成長しても、常にベンチャーであるべきという信念が、私の中にはあります。
社長が一番高給取りのベンチャー企業は、うまくいきません。Ubicomを立ち上げたときも、決して順風満帆だったわけではなく、債務超過に陥り、苦しい時代もありました。そんなときも、自分の給料を抑えてでも、少ない利益をなんとか社員に還元していました。いま、会社は東証一部上場を果たすまで大きくなりましたが、私は常にベンチャー企業だと思って経営しています。
常にベンチャー・マインド。Ubicomには挑戦を受け入れる風土がある
ベンチャーなのだから、常に挑戦すべきなんです。やりたいと思うことをやってみて、問題があればすぐに修正すればいい。ダメならダメで、そこで得た経験をもとに、またトライしてみればいいのです。
Ubicomには、挑戦と失敗を受け入れる風土があります。私自身、事業運営の中で失敗し、すぐに方向転換したこともたくさんありますから。反対に、常に受け身の方は、Ubicomで働いても楽しいと思えないかもしれません。
弊社では、最近は韓国やフィリピンなど、海外からの入社希望者も多く来ます。彼らと面談して驚くのは、「自分は必ず利益貢献できます」と明言することです。また、「Ubicomの経営戦略を聞かせてほしい」など、逆に経営陣が質問攻めにあうこともあります。彼らの方からUbicomを見極めようとする姿勢で、面談に臨んでくるのです。日本の学生でも、それぐらいの勢いがあると頼もしいと感じますね。
Ubicomを活用し、大きく羽ばたいてほしい
私は、東京ニュービジネス協議会で、アントレプレナー創出委員会の委員長を務めています。そこでは、新しいビジネスのアイデアを抱え、IPOを目指す若い経営者たちを指導し、上場までサポートしています。
多くのベンチャー起業家を見てきたからこそわかるのですが、ベンチャー企業創業者も、明るく前向きで、過去のビジネスを「変える(無駄を捨てる)勇気」がある人が最終的には勝ちます。もちろん、ビジネスの内容も重要ですが、経営者が前向きであれば、たとえその事業でうまくいかなかったとしても、別の事業で挑戦し、いつかは成功できるでしょう。
一緒に働く方も同じく、明るく前向きで、何事も決めつけない方がいいですね。失敗したら軌道修正して、またチャレンジできる方。反対に、何事もダメだと決めつけてしまう方は、弊社ではなかなかうまくいかないでしょう。同じ会社の仲間ですから、Ubicomで働くことで幸せを感じてほしいと思います。ここで働いて満足できるか、それを基準に判断していただきたいですね。
私はUbicomに入社してくれた方にはやりたいことをどんどんやってほしいと思っています。やりたいことを実現できるようサポートしますし、そのためのポジションも与えます。どんどん挑戦してほしいですね。Ubicomの幹部になりスケールを拡大するも良し、実力をつけて、Ubicomから飛び出し起業して謳歌するのもいいでしょう。Ubicomではできない新しい挑戦をしたいなら、会社を飛び立ち、起業してもらっても構いません。
起業というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、Ubicomで経験を積めば、アイデアの種を持ち、形にすることは決して難しいことではありません。私にだってできたのですから。
起業して、会社を大きくし、新規上場の鐘を鳴らす快感を味わってほしい。そのために必要なマインドやスキルが身につくよう、Ubicomを大いに活用していただきたいですね。